草市はお盆の精霊棚や仏壇に供える飾り物や供え物を売る市で盆市ともいう。人々は盆の直前に立つこの市で、ほうろく、おがら、まこも、すだれ、まこも作りの牛馬、提灯などを求めて先祖霊を家に迎え、江戸東京の季節市として風物詩となっていた。
戦前までは各地の繁華街の街角に立っていたが、時代と共にその殆どが消滅し、僅かに「草市」の名を留めているのは月島西仲通り500mの通り全部に立ち並ぶ「月島草市」だけだ。通りの両側には地元商店街だけでなく町会や各地の物産も集結して、お盆関連商品に代わって飲食物はもとより昔ながらの遊びにいたるまで多彩で数知れぬ店が大声で客を呼び、浴衣姿に着飾った少女から大人まで大勢の客が押し寄せて大変な賑わいを見せている。
新しい東京の風物詩、「縁日草市」の誕生だ。
月島草市の賑わい
昔は市の立つた場所も今の西仲通りではなく、月島の渡し場から当地区内唯一の寺院、本芳寺の門前横丁までにかけての道路沿いとなっていた。
お盆の行事
一般には7月13日をお盆行事の始まりとして、13日の夕刻に迎盆といって家々の門口で先祖の精霊を招くために迎え火を焚く。
玄関先にホウロクを置き、ホウロクの上にオガラを乗せて火をつけ先祖を迎える。また菩提寺から僧侶を招いて棚経をあげてもらう。仏壇の前机又は引き出しにマコモを敷く。ホオズキで飾り付け、みそはぎの葉、水を入れた茶碗、馬と牛に見立てたキュウリとナス(キュウリはお迎え専用の馬で出来るだけ早く家に帰ってくるように、ナスは送り専用の牛で出来るだけゆっくりと家を離れるように)蓮の葉の上に水の子(なす、きゅうりを細かく刻んだ精霊の食べ物の事)を乗せる。
盆棚は、精霊棚、先祖棚ともいい、位牌を安置して供え物をのせる棚だが、現在一般家庭では盆棚は作らず、仏壇をそのまま使う。盆棚を作る日はたいてい13日の朝からで、精霊送り盆の15日の夜は、家に帰ってきていた精霊が再び幽界に帰るので門口に送り火を焚いて送りだす。これを精霊送りという。
盆には昔から祖先の精霊の目印となるように戸外に灯篭を高く掲げたが、これを提灯に変えて室内に下げるようになった。13日の夜から15日の夜まで、夜毎灯を入れて飾るのが正式だ。
月島草市で唯一、お盆商品を売る露店
右から、迎え火を燃やすホウロクとオガラ、お盆用品セット、マコモ、マコモ馬、迎え火、送り火に灯す小さな提灯
スーパーボールすくい
昔は金魚すくいだった
クランプボール
最近流行の玉突きに似たゲーム
輪投げ
浴衣姿の女の子が楽しそうに
月島草市見学
月島で草市が始まったのは明治時代末期だそうで、歴史は古くないが第2次大戦後の盛況さは都内最大級のもので、隅田川を渡って多くの人々がやってきたという。
仏事の簡略化、生活様式の変化、そして今では草市の品々は八百屋、スーパーで身近に手に入ることから草市は消滅して変貌し、お好み焼き・たこ焼き、焼き鳥、ポップコーン、焼きそば、ラーメン、パスタ、ステーキなどの食べ物屋、かき氷、アイス、ビール、ワインなどの飲み物屋、それに今では珍しい存在となった射的・輪投げ・金魚すくいなどが大勢の子供たちを集めている。
肝心の盆用品売りは通りを往復してやっと1軒見つけた。これも後から考えてみると「草市」の名を使っている主催者側の計らいなのかも知れず客は全く見向きもしていなかった。盆用品売り露店は1軒ながら昔の草市の面影を残してくれていたが、これだけ多彩で多くの露店と大勢の客を集めている所謂「縁日市」の例は他に記憶が無く、世田谷のボロ市を連想させる。
このように変貌した「月島草市」、町おこしのためのイベント行事として始まったのだろうが、今では盆前の季節市として東京の新しい風物詩になっていくのではなかろうか。
基本情報
日程: 7月中旬
アクセス: 有楽町線、大江戸線・月島駅
場所: 月島仲通り商店街(中央区月島3-15-12)
連絡先: 03-3531-0076(振興組合)